ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣

「ダンサー、セルゲイ・ポルーニン 世界一優雅な野獣」セルゲイ・ポルーニン出演、スティーヴン・カンター監督、イギリス、アメリカ、2016


バレエファンの間ではけっこう話題になっていたというこの映画、やっと行った。広島では3週間だけ、それもちょっと外れた横川シネマの上映だったが、けっこうお客が来ている。田舎でも知っている人は知っているということ。

セルゲイ・ポルーニンは、1989年ウクライナ生まれのバレエ・ダンサー。キエフのバレエ学校から、イギリスのロイヤル・バレエの附属学校に13歳で移り、18歳で卒業した後、すぐにプリンシパルに抜擢。しかし22歳で突然ロイヤル・バレエをやめてしまい、その後モスクワ音楽劇場バレエに移るが、YouTubeのMV『Take Me To Church』が当たって、この映画ができた。ポルーニンのドキュメンタリー映画

子供の頃から練習風景や家族の様子などが質の悪い映像で映っている。お母さんがステージママで、貧乏な家なのに家族みんなが出稼ぎして学資を作り、バレエ一筋で育てた。

ローザンヌのコンクールで優勝して、ロイヤル・バレエの附属学校に行けたのだが、母親が付き添うことはできないので、そこから一人暮らし。しかし、卒業後プリンシパルになってから、両親が離婚。それで心が折れてしまい、クスリやら何やらでいきなり退団。ロシアで一からキャリアをやり直し、全身タトゥーで全然違う人になって、YouTubeのおかげでスターダムに登った。

バレエダンサーの1番上は、バレエ一筋に決まっているが、もちろんこの人もそう。しかし一旦そこでコケてから立て直す過程で、バレエバカではなくなった。妖精みたいにきれいなのに、タトゥーなんてもったいないと思うが、この人にとっては、それが道なので、文句はいえない。

この人のダンスは、バレエ素人でもわかるすごさ。YouTubeのMVはむしろこの人のダンスのベストではないと思う。それでも、YouTubeでバレエファン以外の人をひきつけられたから、今があるわけで、音楽との組み合わせが違うだけでこれだけ結果が違うのだ。

人生のやり直しとか、現在のバレエ(古典芸術全般も同じ)の立ち位置とか、いろいろ考えさせられる。田舎だとバレエ見られないし、自分はバレエファンではないので、この映画がなければ、この人を知ることもなかったはず。もし日本公演があれば行くけど、そんなものがあったとしてもすぐに売り切れるだろうし。いろいろとむずかしい。