イスラーム入門

中田考イスラーム入門 文明の共存を考えるための99の扉』集英社新書、2017


この4月に出た中田考の本。99項目のイスラム用語集という体裁だが、法の宗教、イスラームの下の暮らし、イスラーム人物伝、イスラームと現代の4つの章に分けて、事項を並べている。

基本的に知らないことを知ろうとすると、新書は逆に読みにくくなることがあるが、この本もその一つ。最初の「法の宗教」の章は、初めのうちは、ムハンマド啓典の民クルアーンハディースシャリーアというような基本的なことから書かれているが、法学派ごとの違いになると、非常にわかりにくくなる。もともとイスラムの法体系が頭にあらかじめ入っていないと、法学派の違いはわからない。

2章は五行六信、マッカ、カアバ神殿のような具体的なことになるので、こちらは頭に入るが、3章の人名、4章の現代事象は、固有名詞ばかりなので、簡単には頭に入らない部分が多い。現在の話はいったん置いて、イスラム史の基本的な本を読まないとわからない。

最後のコラムを大川周明井筒俊彦にあてて、日本でのイスラム理解について論じているのは、よくわかった。新書はただの扉ですよという話。