第一次世界大戦

山上正太郎『第一次世界大戦 忘れられた戦争』講談社学術文庫、2010


戦争そのものよりは、外交関係を中心にした第一次世界大戦史。物語っぽい叙述だが、その分読みやすい。

戦史部分には最低限のことしか書いていないので、それについては他の本を併読する必要がある。ヴェルダンとソンムは一節で片付けられているし。その分、ていねいに書かれているのは、まずロシア。

革命、内戦、干渉戦争の部分はある程度手厚く書かれている。コミンテルン創設までまめに書いてあるので、この部分をざらっと読むにはよい。そこに合わせて、ドイツ革命についても、ていねいに書いてある。

あとは講和会議とその後についても、かなりページが割かれている。クレマンソー、ロイド・ジョージ、ウィルソンの死についても触れられている。ウィルソンが早く死んだことは知っていたが、ロイド・ジョージは、1945年まで生きていた人。ドイツ敗戦の一ヶ月ほど前に亡くなった。第一次世界大戦後はまるで表に出ない人だったので、わかっていなかった。

あとがきを読むと、個別のできごとを国別に分けて書くのではなくて、できるだけ時期を合わせて、各国の行動が相互に関連することがわかるようにすることに配慮している。歴史叙述は単なる概説であってはならないと書いているが、そのとおりで、これがない歴史研究書はやはり読むのがつらい。