さよなら、カルト村

高田かや『さよなら、カルト村 思春期から村を出るまで』文藝春秋、2017


著者の前作『カルト村で生まれました』に次ぐ、ヤマギシ会での生活の記録。この本で扱っているのは、中等部(中学生)から高等部まで。その後の生活と現在の夫との出会いについても少し触れている。

ヤマギシ会では、義務教育までしか学校に通わせないので、中等部では、普通の中学校に通い、それ以外の時間に労働しているのだが、「高等部」はもはや学校には通わない。また、「高等部」は、実質的に学校ではなく、労働しかない。こんな状態で子供は我慢できるのかと思うが、著者は、村の中の人間はそういうことにずっと慣れているので、つらいことがあっても、さほど問題にはしていないという。

思春期のことなので、男女関係が当然問題になる。しかし、男と女を分けて扱うことが普通なので、著者は「男嫌い」で通しており、それで当然だと思っていたという。驚くような話だが、一部の美人らしき女は秘密で男女交際を持っているが、著者の回りでは、そういう例は限られている。特に男の場合、性欲をどうしているのかと思うが、高等部からは完全に男女が分けられる。

また、高等部は全員が行くのではなく、実習生という高等部ではないグループがある。これは高等部として集団生活をさせるには適さないと見られた子供のグループ。こちらの方が自由なのだが、待遇は悪く、「外れた者が行くところ」とみなされているので、あまり人気がない。

結局、高等部終了時に、著者は、「自分は村での生活には向かない」と思って、外に出るのだが、これも多分に偶然が大きい。ヤマギシ会の生活は成人には厳しすぎると思っていたが、子供からいる者にとっては、不平はあっても、それが当たり前と思っているので、やっていける。親子関係の薄さ、男女関係の薄さは、所有の禁止と一体になっているが、これが成り立っていること自体がすごいこと。

ヤマギシ会での体験記はいろいろあるが、子供時代のことを書いたものは少ないだろう。非常に貴重な本。