裏切りの戦場 葬られた誓い

「裏切りの戦場 葬られた誓い」、マチュー・カソヴィッツほか出演、マチュー・カソヴィッツ監督、フランス、2011


ニューカレドニア諸島のウベア島で1988年に起きた「ウベア島事件」の映画。この事件のことをまったく知らず、さらにニューカレドニア諸島で独立運動があることすら知らなかった。

主役のルゴルジュ大尉は国家憲兵隊の治安部隊将校。ウベア島で独立派の現地人が、憲兵隊員4人を殺害し、多数の隊員を人質にとる事件が起こった時に、この事件の交渉役になる。この時は、大統領がミッテラン、首相がシラクの共存政府で、しかも選挙中。この事件の解決は政争がらみになり、交渉は成功していたのに、特殊部隊が突入するというおはなし。

ルゴルジュ大尉は、被害局限を第一に独立派のテロリストと交渉。当然独立派は善人というわけではないが、自分たちの主張を話させてくれれば投降すると言っている。そんな話にシラクが乗るわけはないが、後味が悪いのは突入の後。

独立派は捕まった後、無抵抗の状態で特殊部隊にあっさり殺される。即決処刑。もちろん、政府発表ではその事実は伏せられている。都合の悪いことはテレビには出ない。

突入作戦は、ミッテランも同意しているので、単純にアンチ右派というのではないが、これはフランス的には嫌な話。選挙がからむと、政府は何でもするということ。逆に、「平和的解決が第一」という日本人には、この映画のややこしい矛盾はわかりにくいだろう。