ど根性ガエルの娘 1

大月悠祐子ど根性ガエルの娘』1巻、白泉社、2016


作者は、「ど根性ガエル」の作者、吉沢やすみの娘。この作品は、その父親と家族についての実話。

ど根性ガエル」は、もともとアニメでしか知らなかった。昔は家がマンガ禁止だったので、漫画誌を読んでいなかったから知らなかったのだが、当然原作があったわけで、それを描いていたのが、吉沢やすみ。この人は、基本的に継続的にヒットを出すことはなかったのだが、1作目があまりに大成功してしまい、その勢いを維持することができなかったというもの。

そんな人はいっぱいいるのだが、この吉沢やすみは完全に破綻している。プレッシャーのせいで、ギャンブルに行ってしまい、さらにそのまま失踪。そのために原稿を一時に大量に落としてしまう。これで仕事はなくなるのだが、その後も家から金を持ち出しては、ギャンブルにつぎ込む生活。奥さん(つまり作者の母)が看護婦だったので、子供の生活はできたのだが、家庭としては成り立っていない。

それでも、離婚はせず、ギャンブルと失踪を繰り返して、今は普通に老人になっている。こんな人が、ちゃんと生きていて、このことが細かくマンガに描かれるということ自体が稀有なこと。吾妻ひでお失踪日記』もかなりすごかったが、これは娘の視点から見ているというところがいい。

これほど転落が深いと、たいていは家族関係が破綻するし、離婚になってあたりまえだが、この人の場合、奥さんがダメ男好きだったので、そこは免れた。考えてみれば、吾妻ひでおだって、アルコール依存症で失踪していながら、家族は離れていない。檀一雄も、終わりまで家族に大事にされていたわけで、破滅している人が、なんとか生きていられたのは奥さんのおかげだろう。

3巻まであるので、これは読む。絵柄もいい。