回思九十年
白川静『回思九十年』平凡社、2000
日経は新聞だから、これだけは甲骨文は出ておらず、白川静の回想だが、あとのインタビューの部分はすべて甲骨文から、漢字への変化を説明しているので、この字形が出て来る。活字にはならないもので、白川静が自分の手で写し取ったもの。甲骨文は、それしかできないのだが、この作業をすべての字について、途中の変化を含めてしている。気の遠くなる話。
インタビューでも、相手の言葉に出てくる字について、すべて字の原義に遡って説明しているから、本物の生き字引。こんなことも、自分一人で辞書をつくっているからできるわけで、こんな人はもう現れることもないだろう。
私の履歴書のところを読んでも、子供の頃から、詩も文章もひたすら覚えるという作業をずっと続けている。こういう人の周囲には同学の士が集まっていて、これもたいへんな人々。人知の及ばないような世界。