東京ディープツアー

黒沢永紀(編)『東京ディープツアー 2020年、消える街角』毎日新聞出版、2016


東京に残っている、昔のかけらを拾い集めた本。ネタは、近代建築、飲み屋街、色街、住宅、といったもの。

近代建築遺産は、すでにいろんなところで紹介されているが、特に住宅は、あっという間になくなってしまうもの。この本でいちばん印象深いのは、西新宿5丁目。都庁や高層ビル街の北西部にあるエリア。こんなところでも、つい今までは、ボロ住宅や銭湯や商店が残っていたのだが、この本の取材をしている時期が、再開発の最中。

同じ区域の2007年と2016年の写真が並べられているが、建物が建て替わっているだけでなく、道筋も変えられていて、昔の面影は完全に消え失せている。新宿駅に10分ちょっと歩けば行けるようなところがボロボロ状態だったということが奇跡のようなものなので、権利とか、お金がなんとかなれば、あっという間に町が変わっているというようなことはよくあること。

このあたり、昔通ったことがあったかなかったか、それも記憶に残っていない。しかし、この本があるおかげで、やっと昔の残骸の最後の姿が記録に残っている。

それから強烈なのは、青梅。ここには簡単には再開発の手は届かず、ボロい建物がなんだかんだと残っている。そもそも青梅に高層建築がないし。東京がいくら開発されたとしても、さすがにここまではどうにもならないらしい。ちょっと前に奥多摩まで行ったのだが、青梅が都会に見えるようなところ。とはいえ、青梅も人が住んでいるわけで、ボロい建物がボロいままで永久に残るわけではない。やはりあるうちに行っておかないと、いつまでも残るものではない。

いろんな意味でありがたい本。グーグルは、せっかくストリートビューというものがあるのに、こういう記録を取ってはくれないものかと思う。