日本人と中国人

陳舜臣『日本人と中国人 ─”同文同種”と思い込む危険』祥伝社新書、2005


これは、陳舜臣が、1971年に書いたエッセイを再版したもの。ちょうど日中国交正常化の頃で、「今の中国について書いてくれ」と言われた著者が、「そんなものより中国の歴史のことを書くべき」ということで書いたのが、この本。

中国人の文化(著者は日本生まれ)について書いたものなので、内容は今でも陳腐化していない。結局、日本と中国は同文ではあるが、全く同種ではない。中国の古典を共有していたのは昔のこと。それも一部の人間だけであり、科挙もしていないのだから、定着していない。違うところだらけ。隣人ではあっても、兄弟ではない。

違いはいろいろあるが、やはり日本では「革命」がないことが大きい。何事も革命は抜きにして変えていくので、全部を塗り替えることがあまりできない。人の力もそれだけ小さいものになる。

歴史学者ではなく、歴史小説家のエッセイなので、おかしなところもあるのかもしれないが、司馬遼太郎ほど変ではないだろう。著者は40代でこの本を書いているが、読書量はすごいし、日本の歴史についてもおかしな見方はしていない。自分には中国のことは知らないことだらけ。