朝鮮大学校研究

産経新聞取材班『朝鮮大学校研究』産経新聞出版、2017


産経の朝鮮大学校本。こっちは日共と違い、他の情報源がほとんどないので、面白半分で読んでみた。

朝鮮大学校は、もはや全学の学生数が600人しかいないという。政治経済、文学歴史、経営、外国語、理工、教育、体育、短期大学部の8学部で編成されている「大学校」の学生数(1学年ではない)が600というのは、経営が成り立つ規模ではない。全盛期は1990年代なかばで、この時期には1500人だったという。これでも、8学部の学校としてはかなり少ない。教員数が書かれていないのだが、実質的に無給に近い状態で働いている教員もいるだろう。

朝鮮大学校は、朝鮮学校卒業者しか原則として受け入れないのだが、この朝鮮学校卒業者が少ない。そもそも、2016年の法務省統計では、外国人登録制度での「朝鮮籍」者は、わずかに34000人しかいない。10年ほど前に、推測では10万人ほどではないかと聞いたことがあるが、それにしてもあまりに少ない数字。実際には、パスポートなどの都合で便宜的に韓国籍を選択した者もいるだろうが、それにしても、総連が韓国籍にしないように働きかけているのにこの数字だから、総連の運動などほとんど効いていないということ。

産経に、「昔の朝大」の様子を話しているのは、現在40代以上の朝大卒業者が中心だが、わずか20年ほど前に、よくこんなことが日本でできたというようなもの。全寮制で、北朝鮮に近い締め付けをしようとしていたのだが、こんなことを現代日本でしようとすれば、学生などいなくなるのはあたりまえ。ただでさえ、朝鮮大学校を卒業することのメリットは何もないのに。

朝大の中の「エリートコース」は、政治経済学部を卒業して総連の活動家になること、その次は教育学部を卒業して朝鮮学校の教員になることだと述べられているが、両方とも、もはやまともに職業として成り立つコースではない。必然的に、朝大に進学する者はいなくなるということ。

ただし、産経が出した本だけに、事実の誇大な表記や、偏った評価が多すぎる。朝大が北朝鮮との関係でどのようなことを行っていたのかについては、まだ断片的なことしかわからない。また、朝大の認可取り消しは、よほどの新事実がでなければできない(朝大が訴訟を起こすことは確実なので、認可取り消しには十分な法的根拠が必要)のに、そこが甘すぎる。

類書がほとんどないだけに、貴重ではあるが、もうちょっとていねいに作ればいいのに。産経はいつもこれだから・・・。