文部省の研究

辻田真佐憲『文部省の研究 「理想の日本人像」を乙女と150年』文春新書、2,017


辻田氏の新刊。これは文部省の歴史。教育勅語ネタと言うところから出てきたらしいが、これは良い着眼。

文部省は最初のうちこそ、学制を作るなど、非常に仕事が多かったのだが、結局は内務省の侍女のようなことになってしまった。これは、地方行政がマンションに仕切られていて、文部省は中央でプログラムを立てるだけで、実際に小学校や中学校を監督することができなかったため。結局は文部次官の多くは、内務省から来ていたし、文部省が独自の教育行政をすることもほとんどできていなかった。

初期には、比較的リベラルな人間像を目標として掲げていたこともあったが、1930年代後は完全に文部省は皇国史観の宣伝本部となり、忠君愛国の権化のようなプログラムを出し続けることになった。戦後は、一転して、またリベラルな人間像を目標として役所の体制を立て直そうとしたが、それも占領軍の体制に合っておらず、簡単に挫折。

その後の文部省は、日教組との戦いで勢力をすり減らす。結局勝ったのは文部省だったが、これは勝手に日教組の方がこけたもの。

ゆとり教育は、実はエリート育成に資源を投入することが目的だったとか、色々と面白い情報があって、楽しく読めた。官僚制史の本としても面白い。

読みどころが多い本で、著者の努力には敬意を表するが、しかしいつもの著者の癖で最後にあまり面白くない、著者の価値観の開陳が始まり、非常にがっかり。事実の探求だけで終わらせると言うのは、著者には受け入れられないのだろうか。この部分が大体愚にもつかないものなので、何とかしてもらいたい。