霧につつまれたハリネズミ

「霧の中のハリネズミ」、ユーリ・ノルシュテイン監督、ソ連、1975


この前見た、ノルシュテインのドキュメンタリーがあまりにおもしろかったので、作品を見てみた。これは10分ちょっとのもの。

童話っぽい体裁になっているが、子供なら入れるとか、子供しか入れないというようなものではなく、完全に見る人を選んでいる作品。子供か大人かは関係なく、これを素晴らしいと思える人は、ノルシュテインの内部の世界に共鳴できる人。でなければ、これにはついていけないだろう。

ヨージュカが、川に自分で落ちて流されていくところは、ある意味で死の隠喩のように思える。それを魚が岸まで連れていくところは、話は違うが、ちょっとヨナの話のようにも見える。

最後には、ヨージュカは、また子熊と座って話をしている場面に戻るのだが、そこでのヨージュカは、最初のヨージュカとは違っている。あまりたとえに置き換えないほうがいいのだろうが、人の深いところを突いてくる作品。

このアニメ、切り絵のストップモーションアニメなので、制作には非常な手間がかかっているはず。しかも、興行的に成功するようなものではない。社会主義体制のソ連だからできたもの。ディズニーも、ジブリも、この企画では通らないだろう。社会主義の貴重な遺産のひとつ。