ルポ 絶望の韓国

牧野愛博『ルポ 絶望の韓国』文春新書、2017


朝日のソウル支局長、牧野愛博の最新刊。タイトルはあきらかに大げさ。こういうタイトルが売れるからつけただけというもの。ネタは、韓国社会全般で、幅広く集めている。

朴槿恵弾劾の背後にある韓国人の進学競争とか、おもしろネタも多かった。しかし、これは適当に新聞を読み流していたのではわからない。ありがたい話。

やはりおもしろいのは、対北朝鮮アメリカ、中国の3つの問題の間で、身動きが取れない韓国の姿。それにしても、韓国はなぜもっと長期的な視点で行動を取れないのか。朴槿恵以前から、歴代大統領はだいたいそう。アメリカと中国を手玉に取っているのならともかく、実際は両方から圧力をかけられて右往左往しており、ほとんど主体的な行動を取れていない。

THAAD配備問題も、長期的な判断ではなく、北朝鮮の核実験に対して切れた朴槿恵が、その場の判断で行動しているとしか思えないような記述。現在の文在寅も、基本的にはあまり変わらず、アメリカと中国の両方に顔を立てようとして、結果的にどちらともうまくいかないことになっている。

取材ネタの積み重ねなので、長期的な話はあまりわからないが、新しいネタをこれだけ仕込めれば大したもの。能力のある人をちゃんと要地に送れるだけ、朝日は厚みがある。