深爪式

深爪『深爪式 声に出して読めない53の話』KADOKAWA、2016


著者は、ツイッタラー。まあ、ただの主婦。これまで電子書籍で出ていた本2冊を合本して、それに新しいエッセイを書き足したもの。おもしろい。

著者紹介で「1970年代生まれ」と生ぬるいことを書いているが、まあ40代くらいだろう。「アラサー」と自分を区切っているので、30代はなさそうだし、子供時代がけっこう貧乏ライフだったことも書いているので、そんなもの。

このエッセイが注目されたのは、最初の方に載っている下ネタによるところが大きいと思うが、ここは確かにおもしろい。大学入学後に初めてセックスしたと書いているが、その後はあっという間にヤリマンになり、モテ期をさんざん経験した後、結婚。

しかし、結婚後は、子作りを夫に断られ、セックスレスになって、現在に至るという波乱の生涯。まあ、このくらいはあるあるだ。

切ないのは、著者の子供時代のこと。母親の思い出だけ出てきて父親が出てこないなーと思っていたら、父親はガンガン母親に手を上げるという人でなしで、著者は成人してから父親と和解したということだが、モテ期を謳歌した人でも、人生いろいろと苦労しているのだ。

著者は非常に頭のいい人で、洞察力のある人。こういう人がツイッターで可視化されているこの世の中だが、いくら匿名とはいえ、ここまで書くのかと思うくらい、自分の黒歴史について書いている。下ネタくらいなら別にいいが、夫とのことやら、母親が明らかに精神的に問題を抱えていることなど。頭のいい人は、生活を楽しくできるわけではなく、逆にいろいろと見なくてもいいものが見えるのでたいへん。BBAとなって、子供(甥)は好きだが、自分の子供なしの人生だそうだ。いまさらハッピーになれる人ではないと思うが、健康に人生を送ってほしいと思う。