辛酸なめ子の世界恋愛文学全集

辛酸なめ子辛酸なめ子の世界恋愛文学全集』祥伝社、2016


辛酸なめ子が、日本と西洋の恋愛小説を軽く紹介しまくる本。いちおう、古いものから新しいものまでフォローされており、『竹取物語』、『蜻蛉日記』、『好色五人女』くらいから、『老妓抄』、『智恵子抄』、『太陽の季節』、『肉体の学校』あたり、さらに現代の『セカンドバージン』、『女のいない男たち』、『ジョゼと虎と魚たち』などなど、ケータイ小説までカバーしている。

西洋小説は、『はつ恋』、『恐るべき子供たち』、『デカメロン』、『毛皮を着たヴィーナス』から、現代小説まで。

連載ものだったこともあるだろうが、あまり長い小説はない。逆に言えば、中編以下の作品しかないので、ここで紹介されている小説は気軽に読めるものばかり。読書案内と考えれば、あまりに長いものは、気力が必要だから、このくらいでちょうどいい。

非常に惹かれたのは、マゾッホ『毛皮を着たヴィーナス』、岡本敏子『奇跡』、向田邦子『隣の女』。これはかなり読みたくなった。特にマゾッホ

あと、太宰治のモテモテエピソードはやはりすごい(小説紹介ではなく、コラムのみ)。あれくらいモテていれば、女嫌いというか、女を軽蔑するのも当然。避けても女の方から次々と寄ってくるというもの。もちろん、ただの受け身ではなく、タイミングを外さず、自分の方から近づいていく術を体得しているのは当然のこと。

辛酸なめ子は、小説と自分の恋愛を重ね合わせてどうのと言っているが、あいかわらず自分のエピソードは出てこない。しかし恋愛小説など、自分の経験と合わせた時により楽しめるというものなので、辛酸なめ子は、読者よりスーパー楽しめているはず。