人間失格

太宰治人間失格新潮文庫、1985


太宰治は初めて読んだ。めちゃめちゃおもしろい。

この本に出てくる主人公は、とにかくめちゃモテ。次から次へと女が寄ってくる。本人がなにもしないのに、女の方から寄ってくるというおそるべき人。逆のモテ子も、たまにはいるので、こういう人がまれに存在するというのはわかる。しかし、こういう人は、だいたいハッピーにはならないもの。

女の方から言い寄られるのだが、本人は、フラフラしていて、自分から女を好きになるということはなさそう。まあ、そんなことは必要ないわけで、女が途切れずに寄ってくる人は、自分から女に寄っていくことなど、なにもない。一方的にモテている。

しかも、この主人公、頭はよく、人の心の中は見透かしている。だから、自分に寄ってくる女が何を考えているかもよくわかっている。こういう人は、性欲は満たされているかもしれないが、それで自分の心が満たされるということはないので、いつまでもフラフラしつづけることに・・・。

いちおう小説っぽい体裁になっているが、明らかに太宰治本人の経験がほとんどまるっきり投影されている。最後は、療養先で世話をみてくれるBBAとすら、関係を持つことになっていて、もうすごいわ。ダメ男好きな女というのはいるので、ダメ男はそういう女を吸引する何かを出している。おそろしいわ。