日本共産党vs.部落解放同盟

筆坂秀世宮崎学(にんげん出版編集部編)『日本共産党vs. 部落解放同盟』にんげん出版、2010


これは非常におもしろい本。元日共幹部と、部落解放同盟側の人間が、同和問題についての、日共と部落解放同盟の立場や衝突を語り尽くすというもの。

部落解放運動自体が、外部の人間にとってはよくわからず、まして、その中で途中まで共闘していた日共と部落解放同盟が途中から衝突し、不倶戴天の敵になった理由は何なのか、当事者以外は知らない。

衝突の原因は、段階的にできたもの。もともとの、水平社=部落解放同盟と、共産党の認識の対立、政府の同和対策に対する共産党の「毒まんじゅう」論、対立が決定的になった矢田事件と八鹿事件、その後1975年以降は、完全にセクト対立になり、共産党にとっては部落解放同盟新左翼と同様の背信者。部落解放同盟にとっては共産党は差別者。互いに不倶戴天の敵。

この経緯がわかりやすく説明されているだけでなく、部落利権の問題、共産党のエリート意識、両者ともに新規構成員を獲得できず、滅亡に向かっている状況などが率直に語られている。当事者以外が簡単に発言できない問題であるだけに、貴重な本。著者の視点も新鮮で、非常に勉強になった。