フィリピンパブ嬢の社会学

島弘象『フィリピンパブ嬢の社会学新潮新書、2017


けっこう話題になっている本。新聞の書評で2回くらい取り上げられているのを見た。実際におもしろい。

著者は、フィリピンパプのホステスを修士論文の研究対象として、フィリピンパブに入るのだが、そこで若いホステスと恋愛関係になり、ズルズルと付き合って同棲。

しかし、著者の障害がいろいろ出てくる。友人、指導教員、自分の親、そしてホステスと偽装結婚しているチンピラ(ヤクザの手下)やその兄貴分。

フィリピンパブのホステスは昔は、「興行」ビザで来ていたのだが、今はその手は使えなくなり、「配偶者」ビザでしか来られない。だから、日本人と偽装結婚しなければならないが、ピンパブのおねえさんと偽装結婚してもいいという人はなかなか見つからない。戸籍に結婚歴がやたらとあるということになれば、自分の将来が危ない。

基本はヤクザやその手下のフロント企業がこの種のビジネスを仕切っている。これではピンパブのおねえさんと付き合うといっても、簡単にはいかない。

それでも著者は、友人、指導教員から、親にいたるまで、粘り強く説得。なんとか関係を親に認めさせる。この辺の努力が涙ぐましい。

著者は結局修士は修了したものの、その後の就職口がなく、日雇いで土方をしている。幸せっぽいので、いいけどね。

それにしてもフィリピンでの出稼ぎ者へのタカり方は非常にすごい。日本人にはまったく理解できない。ろくに仕事がなく、誰もが貧しいフィリピンでは在外労働者から金を吸い尽くす。どこまでが親戚なのかわからないけど、とにかくやたらとタカりに来る。あれは日本人にはつらい。よほどの金持ちで鷹揚な人しか、ピーナとの結婚は無理でしょう。