警察手帳

古野まほろ『警察手帳』新潮新書、2017


著者はミステリ作家。元警察官僚。ミステリはほぼ読まないので、この人のことも知らなかった。警察には「赤ん坊が第二外国語を覚えるまで」、つまり20年くらいいたと言っていて、2007年に作家としての最初の本を出しているから、今およそ52歳くらいか。

この本は、警察組織の本。警察本部や警察署の組織、刑事の生態、警察庁公安委員会と都道府県警察の関係、都道府県警察同士の関係、警察官の生活や行動様式、といったようなことがネタ。

中にいた人が書いているので、内容は確実だろう。調べると、著者は警察大学校主任教授で退官とあるので、警視正でやめたことになる。20年くらいいたら、そういうこと。

著者の警察在職時の専門分野は、生活安全と警備。フランスに留学して修士を取っているので、警備でも国際畑だったのだろう。しかし、この本には、著者がいちばん詳しいはずの警備と生活安全の話はほぼ皆無。完全にスルーされている。覆面作家だということなので、元組織への遠慮がすごいのか。警察というのはそういうところ。

警察組織の人間関係や部署、都道府県警察間の関係のところはおもしろかった。もうちょっといろいろ書いてくれたらよかったのに。