日本経済入門

野口悠紀雄『日本経済入門』講談社現代新書、2017


野口悠紀雄の、日本経済入門書。読者として想定しているのは、学び直しを目的にした実務家、経済学を勉強したことがないが日本経済についての知識を得たい人、新入社員、大学生、高校生。まあ、高校生以上なら理解できるように書かれている。

経済学の知識は前提としないように書かれているが、その分、図表は豊富に入っている。目で見て、数字が理解できるように、ていねいに工夫されている。

はっきりしているのは、「どこが問題なのかを摘出する」ことを目的に書かれた本だということ。中心となる問題は2つ。1つは、世界経済の構造変化に日本経済が適応していないこと、もう1つは、人口構造の高齢化に公的制度が追いついていないこと。

GDPの基本概念、日本経済の基本構造(産業、就業、分配)の分析、物価、金融政策、高齢化、医療・介護、年金制度、財政にそれぞれ章が割り当てられている。

金融緩和は効かない、高齢化は移民以外の方法では埋められない、社会保障制度は維持不可能、財政は深刻。問題点は明らか。結局、技術開発と市場活性化でしか問題は解決できない。時間の先延ばしはもうできない。論旨も解決策も明確で、受け入れざるを得ない。この内容をこれだけに圧縮できたことがすごい。