中国、「宇宙強国」の野望

寺門和夫『中国、「宇宙強国」の野望』ウェッジ、2017


中国の宇宙開発に関する本。日本語ではほぼ類書がないので、非常にありがたい本。

初期のロケット開発から始まり、軍を中心とする宇宙開発体制、ロケット打ち上げ施設、人工衛星、月、火星探査計画、有人宇宙飛行計画、軍事利用、中国の宇宙開発の目的、についてそれぞれ章が建てられ、中国の宇宙開発の内容が説明されている。

中国の宇宙開発に、どのくらいのお金がかかっているかは正確にはわからない。しかしこの本に示されている宇宙開発事業を実際に推進していくためには途方もない額の金がかかっているはず。

中国の宇宙開発の目的は、宇宙空間の支配において、中国のニッチを確保し、アメリカに対抗し場合によってはこれをしのぐだけの宇宙強国の地位を獲得することである。これには宇宙空間での軍事的優位だけではなく、有人宇宙探査、有人宇宙ステーションの打ち上げ、人工衛星の広範な利用、などの多面的な計画が含まれる。

アメリカに比べて多少費用は安くついているだろうが、それでも巨額の費用がかかっているはず。中国での宇宙開発の主体は、人民解放軍であり、解放軍の戦略補助部隊は、譲が中国宇宙軍に改組されていくだろう。

ロシアやヨーロッパの直接、間接に中国の宇宙開発計画に協力しているので、この問題での中国封じ込めは難しい。彼らもビジネスなので、中国の宇宙開発開発への協力によって、利益を得なければならない。表立って中国の宇宙開発への反対を表明することも難しい。

実際に中国に行くと、宇宙開発計画が、人民に対する国威発揚の重要な道具として役に立っていることがわかる。中国の宇宙支配など、絶対にごめんだが、中国は強固な意志を持ってこの計画を推進し続けていると言う事。いずれ財政的に破綻することを願うが、そううまくはいかないだろう。