覇者の戦塵1944 本土防空戦 前哨

谷甲州『覇者の戦塵1944 本土防空戦 前哨』中央公論新社、2016


うっかり忘れていると、いつの間にか出ている覇者の戦塵シリーズ。終わらせる気があるのかと思うが、ちゃんと時間は進行していて、もう1944年になっている。

しかも舞台は硫黄島。前回のマリアナ諸島の攻防戦で、米軍は失敗したはずじゃなかったのかと思うが、ちゃんとグアムとテニアンを占領して、航空基地を設定し、B-29部隊を展開して、日本本土を爆撃しようとしている。

その前哨として、硫黄島奪取をはかる米軍。そこを守るのは、栗林中将の小笠原兵団。陣地構築も進んでいる。しかし、ここにとんでもない人物が。各務大佐だ。満州でさんざん引っかき回していった各務大佐。

しかもこの話での各務大佐の謀略がものすごい。なんと兵団長の栗林中将を爆薬で謀殺し、自分が参謀長として、指揮権を奪うというもの。

この謀略がどうなったのか、B-29対策の新兵器、試製60センチ噴進砲、要は地対空ミサイルがここで実戦テストをやることになる。

各務大佐、栗林中将はどうなる、試製60センチ噴進砲は撃てるのかというお話。この物語終盤になっても、おもしろさのペースが全く落ちない。

著者あとがきを読むと、登場人物はもとより、兵器一つ、機械部品一個が物語の収束を拒否しているんだそう。この巻は実質的に各務大佐を退場させるためだけのものなので、他のキャラにもそれなりの見せ場ができるはず。この先がまたまた楽しみ。