戦争の世界史 上

W.H.マクニール(高橋均訳)『戦争の世界史 技術と軍隊と社会』上、中公文庫、2014


この巻は、古代から、19世紀初頭まで。古代のことはあまり書いていないので、11世紀の中世から話がはじまる。

まず中国が優位だった1000年から1500年まで。中国での鉄生産が、中国の軍にどの程度影響があったのかを論じている本は、中国史の専門書は別として他にないはず。中国の優位は、ただ人口が多かったことだけではない。周辺の諸民族は、武器生産でも組織でも基本的に不利で、これでは中華帝国に勝つのは簡単にはいかない。

1000年から1600年までのヨーロッパでは、傭兵制、火薬革命、市場が重要。特に傭兵制の内容と重要性については、この本で再認識した。これがないと、フランスやハプスブルク家大戦争はできなかった。

1600年から1750年までのヨーロッパでは、軍制改革と訓練の重要性が強調される。マニュアルに従った訓練はこの時期にできたもの。これができている軍が勝っていた。

1700年から1789年では、フランスの軍制改革、特に徴兵制と社会の関係が重要。イデオロギー的な熱狂は確かに重要だが、それよりもフランス社会の混乱状況が大規模な徴兵を可能にした原因。これでルイ14世時代の30万人から、大陸軍の60万人まで規模を拡大できた。

1789年から1840年では、やはり社会と徴兵制の関係が重要。徴兵可能人口がどのくらいあって、そこから何割徴集できたのか。フランス、イギリス、プロイセンの例が強調される。

イスラム圏の話がないし、海軍はそんなに扱われていないが、驚異的な知識。2002年に出た刀水書房版を積んでおいたのは失敗だった。