病む女はなぜ村上春樹を読むか

小谷野敦『病む女はなぜ村上春樹を読むか』ベスト新書、2014


あっちゃんの村上春樹批判本。あっちゃんは、『反文藝批評』(2003)でも村上春樹批判をしているのだが、こっちはさらに手厳しい。

まず村上春樹ノーベル文学賞を取れるのか問題。あっちゃんが賞を出すのではないので、当たっているのかいないのかはわからないが、ノーベル文学賞委員会は、通俗小説が嫌い。そして村上春樹の「1Q84」は、「セックスを除けば、子供だましのファンタジー小説」で、これが英語に翻訳されて、その前にノーベル文学賞村上春樹が取れなければ、もう無理でしょうというご意見。ボブ・ディランとか、アレクシエービッチとか、「小説家」ではないが、インパクトのある文章を書く人が賞を取っていることを考えると、確かにそうかもしれないという気はしてきた。

いろいろあるが、おもしろかったのは、村上春樹が「俗物」または、俗物根性を煽っているという部分。音楽はジャズとクラシックしか出てこないし、「高級レストランでバカにされない注文の仕方」だとか、そんな話。俗物というのは、社会階層として手が届かないはずのものに、それが無理な人が首を突っ込もうとするということなので、村上春樹も基本、そういう人だという話。

あと、タイトルに関連したことでいえば、「フェラチオ好きな女」とかが主人公の男によってくる(この件は英語版では削除)とか、つまりは心を病んでいて、その結果セックスを愛好している女がやたら出てくる。これは村上春樹の実体験だろうというのがあっちゃんの説。これが当たっているのかどうか、知らんけど、村上春樹ファンの女にちょっと精神的にヤバい人がいることは知っている。

白血病ネタから精神病ネタへの移行とか、柴田翔学生運動とか、おもしろネタがたくさんあった。おもしろかった。