本当に偉いのか
小谷野敦『本当に偉いのか あまのじゃく人物伝』新潮新書、2016
あっちゃんの偉人人物評本。「上げ底された明治の偉人」、「偉いと思われているが、あまり偉くない偉人」(世界編、日本編)と、「誤解の多い、または評価保留の偉人」、「あまり知られていない偉人」、「本当は偉い偉人」からなっている。
「反論大歓迎」と書いてあり、実際に、小説家以外の評価はどうなのかと思う。上げ底評価なのは、福沢諭吉、夏目漱石、岡倉天心、柳田國男、幸田露伴、徳田秋聲、南方熊楠、大隈重信、西郷隆盛、森鴎外、樋口一葉、永井荷風、正岡子規、小泉八雲。
小説家の評価はわからない。しかし福沢諭吉は実際に偉いでしょ。日本人の頭の中を切り替えたのだから。大隈重信は、そんなに偉くないかもしれない。西郷隆盛は、確かに大久保利通よりは偉くはないが、現実に同時代人の西郷への評価は、大久保への評価よりはるかに高く、人に信じてもらえなければ人を動かせないのだから、西郷を低く見すぎていると思う。
世界編は、アレクサンドロス大王、コロン(コロンブス)、フランクリン、カント、ヘーゲル、ゲーテ、ナポレオン1世、ワグナー、シュリーマン、トルストイ、ドストエフスキー、ガンディー、魯迅、ナボコフ、アレント、ラングドン・ウォーナー、フォービアン・パワーズ、D.H.ロレンス。これは全部が上げ底だとは言ってない。しかし、アレクサンドロス大王、コロンブス、ナポレオン1世は、西洋史を実際に変えた人だから偉いと思う。
本当は偉いぞと言っているのは、井伊直弼、伊藤博文、本居宣長、フランコ、野口英世、石原慎太郎(文学者は除く)。井伊直弼はやり方失敗しているからどうなのか。伊藤博文は偉人に決まっているし、本居宣長も偉いでしょ。フランコは微妙。野口英世と石原慎太郎は、まあどっちでもいい。
あっちゃん本人が、「自分の好み」と言っているし、名前をあげた人の事績と、「なぜ偉くない/偉いと思うのか」については、根拠は出されているので勉強にはなった。あっちゃんの本は、正しいと思うかどうかはともかくとして、勉強にはなるからそれでいい。