日本の安全保障

加藤朗『日本の安全保障』ちくま新書、2016


これは完全に頭がおかしい本。加藤朗は、前から変な人だと思っていたが、この人が書いた本は読むだけムダだと確信した。

中江兆民『三酔人経綸問答』を引用して、「安倍政権の安保政策は豪傑君、護憲派は洋学紳士、自分の意見が南海先生」と言っているのだが、中江兆民をヒネリなしで、いきなり今の状況に持ってくるのがおかしいし、単なる自説の権威付けにすぎない。

問題は、著者が言っている内容。日本が「大国ではないのに、大国ぶることがおかしい」という。大国ぶることの中身は、中国に単独で対抗しようとしていることだという。そんなことは誰も言っていないと思うけど・・・。

著者の憲法九条解釈は、「日本国の自衛権憲法で否定されており、個人の自衛権しか存在しない」というもの。そんな考え方は初めて聞いたわ。内閣法制局の解釈や、憲法学者の学説に対してはまともに反論していない。頭がおかしい。

著者の政策提言は、自衛隊と日米同盟は残すが、自衛隊の役割は厳密に日本防衛だけに限定し、PKO自衛隊からは出さない、民間人による「九条部隊」を退職者のボランティアで組織して、それをPKOに出すという。しかも九条部隊のPKOは、「保護する責任」を履行するという。素人に戦争させるつもりなのか?

著者は1951年生まれ。今年66歳ということになるが、頭が完全にボケている。おそろしいわ。