ティーパーティーの謎

E.L.カニグズバーグ金原瑞人、小島希里訳)『ティーパーティーの謎』岩波少年文庫、2005


カニグズバーグは、子供の頃に『クローディアの秘密』を読んでいただけだが、当然ほかにも本は出ていて、これは1996年に原著が出ていたもの。

6年生の子供4人が学校対抗の「博学大会」(クイズ大会)に出場するのだが、この博学大会の進行と、子供4人、それに担任のオリンスキー先生のそれぞれの事情が重なって話がすすむ。子供は、ユダヤ人、半分ユダヤ人、WASP、インド系で、親が離婚とか、移民(インド系)とか、それぞれの家庭に事情がある。

この子供たちが、本当に博学でないと勝てない大会(最後の大会には州の教育長官が来ている)で勝ち上がることそのものが、アメリカでの多文化主義への礼賛になっているという話。オリンスキー先生も、下半身麻痺の障害者。インド系へのいじめとかも抜かりなく描かれている。いろいろ問題は抱えていても、前向きに努力して栄光をつかむというアメリカンな話。

物語としてとにかくおもしろい。『クローディアの秘密』と同じ、ニューベリー賞をとっている。登場人物のキャラが際立っていて、それでいて特別に優秀という以上に、普通に悩みを抱えた子供だということが読み手をひきつける要素。

この翻訳は、もともと小島希里が訳していたものに、問題があるという指摘がきて、金原瑞人が改訳している。もとの訳を読んでいないのでなんとも言えないが、小説、それも児童書で問題があっても簡単に改訳なんかしてもらえないから、よほどカニグズバーグがえらいということ。この本が出版された時点では存命だったが、2013年に83歳で亡くなったという。本の最後に著者の娘が母親のことを語った文章がついていて、これもよい。