夫のちんぽが入らない

こだま『夫のちんぽが入らない』扶桑社、2017


超絶的な傑作。小説だが、内容はタイトルで完全に言い尽くされている。著者は「夫のちんぽが入らない」ゆえに、セックス不可能、妊娠不可能(やる気がなくなった)で、植物のような、兄妹のような夫婦生活を送っている。

著者が、現在の夫と会って、いきなり付き合い始め、ところが最初のセックスで、「入らない」問題に直面し、その後二十年を経て現在に至るという物語。著者が小学校教員として失敗し、職場をやめる過程や、「子供はいつでもつくれるから」と余計な圧力をかける周りの人々のことが読み進むにつれてじわじわと心に響く。夫の風俗通いと、著者が「他の男とはセックス可能」というくだりは、本当に涙なくしては読めない。

この本、もともと同人誌に出したエッセイがネットで拡散し、小説化されて出版された。小説の訓練なんか積んでいなくても、体験に迫真性があればこれだけ書けるのだ。修飾は少なく、事実の積み重ねでできている話。だから著者は職業作家ではないが、クイックジャパンと週刊SPAで連載中とのこと。こんな才能が発掘されるのも今だからこそ。芥川賞はこっちにあげればいいのに。