日本陸海軍はロジスティクスをなぜ軽視したのか

谷光太郎『日本陸海軍はロジスティクスをなぜ軽視したのか』パンダ・パブリッシング、2016


前に読んだ同じ著者の『ロジスティクスから見た失敗の本質』と同じスタイルの本。前著と同じ、雑誌連載記事を書籍化したもの。初版タイトルは、『ロジスティクス思想とは何か―戦史から解明する戦略的物流革命』同文書院インターナショナル。

始めにアメリカの陸海空軍の編成と国防総省設置がどのようにして出来たかについてのエピソードが出てきて、アメリカでも陸海軍の統合は大問題だったこと、反対したのは陸軍に吸収されるという海軍の恐怖心だったことが説明されている。それでもアメリカが軍の再編成をできたのは、大統領のリーダーシップがあったから。

この後の部分は、日本が、鉄道、自動車、船舶、飛行機をロジスティクスにどのように使っていたか、使えなかったかを説明する。基本的には、日本は作戦参謀がすべて決めていて、後方参謀の言うことは無視されていたという話。それはそうでしょうということだが、細かい数字、馬と船の輸送力、三菱汽船=日本郵船西南戦争から日露戦争までどういう仕事をしていたか、日本の自動車開発史、日本の航空輸送といった、細かい知識が詰め込まれていて、そっちがおもしろい。ドイツも、戦略としては失敗していたが、潜水艦の通商破壊戦は計算して合理的にやっていた。計算した上で、結果は負けということと、計算を立てなくて負けたということは違う話。

前著と同様、読んでためになった。著者の他の本(米海軍関係)もこれから読む。