ロジスティクスから見た「失敗の本質」

谷光太郎『ロジスティクスから見た「失敗の本質」 なぜ日本人は兵站が苦手なのか』パンダパブリッシング、2016


最初から電子版だけで出たのかと思ったが、もちろんそんなことはなく、同文書院インターナショナルから1993年に出た『ロジスティクス―戦史に学ぶ物流戦略』の復刻版。今は、出版コストが小さいおかげで、昔の本も復刻できるのだ。ありがたい話。

雑誌連載をそのまま書籍化したもので、戦国時代のことから、太平洋戦争が終わるまでの長い時期を扱う。とはいえ、中心はやはり太平洋戦争時の問題。主に日本とアメリカに焦点が当たっている。

歴史読み物として非常におもしろく、それはこの本が「物語」よりも、数字ベースで叙述しているから。ロジスティクスということなので、輸送、補給、人材養成、兵器生産、組織づくりまで、非常に幅広く扱っている。

南北戦争の時に、北軍の5万人の軍団が一日に必要とした物資が300トンとか、馬が輓馬と駄馬でどのくらい輸送量が違うか、どれだけ食べるか、どの程度の世話を必要とするのか、というようなことから、アメリカと日本の将校養成システムの違い、パイロットがどの程度の期間で育成されていたかということまで、大量に関係書を読み漁らなければ書けないことが多く書かれている。

いくつかは出典がすぐにわかるようなこともあるが、見当がつくのは10分の1以下。雑誌連載の性格上、出典が書かれていないが、巻末に参考文献リストはまとめて載っているから、それを読むしかない。

日本は短期戦の計画しか立てられなかったので、それでは太平洋戦争は無理。日露戦争でも、満洲に30万人の軍を展開し、武器と弾薬を輸送できたのは大変。徴集した兵は110万人いた。このうち、9万人近くが死んでいるので、日露戦争でも大被害で、それ以上戦いを続けることはできなかったのは納得。

体系的な本ではないが、その分非常に読みやすい。読んで非常に得をした本。