紀州のドン・ファン

野崎幸助『紀州ドン・ファン─美女4000人に30億円を貢いだ男』講談社+α文庫、2016


「愛人に6000万円相当の現金と宝石を持ち逃げされた男」として新聞種になった著者の自叙伝。著者が語ったことをライターが文章に落としているので、文章はきちんとしている。

著者は実業家。75歳なので、昭和16年生まれ。高校を卒業して、コンドームの訪問販売を皮切りに、金融、酒販、梅干し販売などの商売でのしてきた人。これまで、4000人の女性と寝ていて、そのために30億円使ったと言っている。数字が正確かどうかは別として、話の内容には非常にリアリティがあり、個々のエピソードは本当だと思う。

著者はとにかく、自分のしたいことはセックス(著者は、「エッチ」と言う)しかないと言っており、二度結婚したが、二度とも離婚。その理由は浮気で、子供はいないという。家も質素で、金はすべてセックスのため。しかも、風俗は嫌で、素人を口説くのでなければダメだという。

著者へのインタビュー記事がネットに出ていたので読んだことがあるが、「飛行機のCAに、1万円札の入った名刺を渡して誘った」というような、アイディア賞もののエピソードが頻出。著者は、セックスのためなら、金はいくらでも使えるし、知恵もいくらでも出てくると言っている。

実際に、著者くらい金を使い、必死になって口説いていれば、それなりの成果が出ることには納得。大学生だろうとなんだろうと、口説けばなんとかなる人はなんとかなる。CAを口説いた時には、最初の名刺に入れたおカネとは別に、30万円渡したと言っている。それだけもらえば、問題ない人はいるだろう。

著者は、クラブのホステスにも一時期は入れあげていた。しかし、クラブのホステスは、金を使っても落とせるかどうかが確実ではなく、成果が出るかどうかわからないので、バカらしくてやめたという。その後著者が入れあげているのが「デートクラブ」。登録していれば、女性の紹介だけをして、後は自分で交渉してくれというシステムなので、その方がより確実性が高く、自分に向いているという。

表紙に著者の写真が出ているが、75歳には見えない程度に若い。最近は見た目が非常に若い老人が多いし、見た目など対してあてにならないのだが、やりたいことにひたすら打ち込んでいれば、若さを保つこともできるのかもしれない。

性欲とそのための努力に一生を捧げた人。マネはできないが、常人にマネのできない人と言えば、そのとおり。