憲法改正のオモテとウラ

舛添要一憲法改正のオモテとウラ』講談社現代新書、2014


舛添要一が、自民党憲法改正第一次草案の作成舞台裏を書いた本。舛添の仕事は、「自民党憲法制定推進本部新憲法起草委員会事務局次長」。この組織がどういう事情でできたのか、憲法改正の論点について、自民党内でどのような議論があったのかをまとめることがこの本の趣旨。

憲法改正案のとりまとめは重要課題なので、重要人物の後押しが必要。それが森喜朗青木幹雄。この二人が認めないことは動かない。

憲法の条文のまとまりごとに、10の小委員会が作られて議論をするが、著者はその小委員会に出られるものは全部出て議論に参加している。議論に参加できないと発言できず、それでは自分の意向は反映されないのだから当然だが、この労力をちゃんと払わなければ全体のとりまとめはできない。

参議院がどれだけうるさいか、族議員、省庁間の抗争、異論をまとめる方法など、自民党内部で物事がどのように決まっていくかを上手に説明している。著者が、元学者であり、第一次草案の全体を見渡しているからできたこと。

著者は、この第一次草案の後でできた第二次草案に非常に批判的で、立憲主義を知らない、右寄りの内容では公明党民主党の賛成が得られないので、それでは国会を通すことができないと言っている。この本を読んでいると、第一次草案については議論が百出していて、第二次草案のようなものを作ることは党内力学上不可能としか思えないが、野党時代の自民党の弱り方では、そこが全く変わってしまっていて、第二次草案でも通せた。それが簡単にできることではないのは、第二次草案を作った人にはわかっているから、後で文句が出ても、第二次草案は変えたくないということだろう。

この本が出たのは、2014年2月なので、舛添が都知事になるちょうどその時。執筆は、著者が参議院議員を辞めて、公職についていない間になされた。おかげで、この貴重な本が出て、部外者でもウラ部分をかいま見ることができた。ありがたい。