文部科学省

寺脇研文部科学省 「三流官庁」の知られざる素顔』中公新書ラクレ、2013


元文科官僚で、現大学教員、映画評論家の寺脇研の「文部科学省という役所」の本。「三流官庁」というのは、旧内務省系官庁から見て、明らかに見下されている文部省、文科省の立場を表した言葉。実際に、戦前の文部省は、地方行政を内務省に押さえられていたので、実権がない格下の官庁。

著者が、筆記試験の後の面接で厚生省に行き、「文部省が第一志望」と答えると、さっさと追い払われたというエピソードで、他の省庁から文部省がどのように見られていたかということがわかる。

文科省が、他の役所と違っているのは、「マルブン一家」という、役所内部の一体感の強さ。特にキャリアとノンキャリアの密接な関係。ノンキャリアもキャリアと同様、都道府県教育委員会や国立大学の事務方と本省を行き来しているし、仕事の大きな部分を仕切っていて、キャリアとの間に家族的な一体感がある。派閥抗争もない。

政治家との関係では、文教族とのつながりがあるが、これは日教組との対立で重要。文部官僚は、日教組に対抗する自民党タカ派文教族にかしずいているという意味で「御殿女中」と呼ばれていた。

しかし文部省は、大きな予算を取れるところではないので、予算の利用という意味での族議員との関係は薄い。著者は、審議官で退職したが、文教族議員と個人的な関係がなくても、仕事上の支障はなかったという。2000年前後に族議員の政治的影響力はほとんどなくなっていた。

逆に、第二次安倍政権になってからは、官邸主導で「教育再生実行会議」がおかれ、首相と意を通じる文教族議員の影響力は増している。これは他の省とは違うところ。

次官になる人のキャリアパスと、著者のようなそうではない人(著者は54歳で退官)のキャリアパスの違いなど、役所の中の人としての情報が多く、非常に勉強になる本。他の省の人も、このくらいのことを書いてくれると助かるのだが。