スクープ!

中村竜太郎『スクープ! 週刊文春エース記者の取材メモ』文藝春秋、2016


著者は元週刊文春記者で、この本は『日刊ゲンダイ』の連載をまとめたもの。著者の週刊文春時代の取材の経緯を書いているのだが、そのネタは、「シャブ&飛鳥」、「高倉健の養女」、「NHKプロデューサー横領事件」、「勝新太郎」、「オウム事件」など。

週刊文春のスクープ記事をどうやって取材しているのか、見当もつかなかったが、方法が特別だということはなく、まめに取材して、わかったことを人にぶつけてそれを積み上げていくという記者は誰でもしていること。

しかし、その密度としつこさが普通ではない。特に相手のガードが非常に固い組織(NHK)であっても、内部には自分の知っていることを他人に話さないではいられない人がいるもので、その人に口を開けさせるのは、記者側がどこまで知っているのかということ次第。

週刊文春の編集部員は60人。その中でニュース取材に当たる「特集班」は40人ほど。40人で毎週雑誌を出していて、あれだけのスクープを取ってこられるのだ。編集会議=プラン会議が週に一度開かれ、その時に毎週5本のネタを発表しなければならない。

著者は先輩の誰かから取材について教えてもらったなどとはまったく書いていない。これも当然で、自分が掴んできたネタを途中で同僚に話す人などいない。チームで取材するのは、ある程度ネタが確実になったから後のこと。ネタを取ってこられない記者は去るのみ。

記事でネタにした相手が裁判に訴えてくることも当然あり得るので、重大なネタであるほど、取材内容に穴があることは許されない。定期購読者が少ない週刊誌はスクープを出すしかなく、それはこのくらいの取材ができていないと出せないということ。