このままでは必ず起る日本共産革命

賀屋興宣『このままでは必ず起る日本共産革命』浪漫、1973


古本屋でたまたま手に入れた本。賀屋興宣が政界を引退した翌年に書かれたもの。田中内閣の時期で、都知事美濃部亮吉

共産党の革命が近々起こるという論旨だが、どうやったら共産党が革命を起こすのか、具体的な議論がない。ただ共産党が選挙で多数を占めるとか、民主連合政府ができるとかいう路線ではなく、共産党は大規模なデモや騒乱を起こして、それに乗じて革命を起こすだろうという予想があるだけ。

著者が直接の脅威と感じているのは、日中国交正常化美濃部都政。しかし日中国交正常化については、それがただちに大陸による国民政府の吸収にはつながらないことについてよく理解している。だからこちらはただの恨み節で、問題は美濃部都政の方。美濃部都政が、社会党共産党主導になり、公明党もそちらについていくので、安心できない、美濃部都政の下で警察力の弱体化が図られると危ないという主張。

だいたいそのレベルの主張で、特におもしろいことは言っていないが、共産党批判に集中していて、社会党共産党とどのような関係にあり、社会党が暴力革命で何をするのかについては何も書いていないところがおもしろい。著者の敵はひたすら共産党で、社会党は仲間にはなれないが、敵ではないということ。

もうひとつは中ソ関係。著者は当然ソ連と中国の両方を否定するのだが、現実に中ソ対立が存在することは知っている。では、共産党ソ連、中国とどのような関係にあるのか、日本に暴力革命があるとすれば、ソ連、中国の役割はどうなるのかについても何も書いていない。

序文を黛敏郎村松剛が書いているほか、著者と石原慎太郎の対談も載っている。お互いしゃべりたいことを勝手に話していて、すれ違いという印象。

著者は、政界を引退しているが、「自由日本を守る会」という草の根右派運動を起こそうとしていて、その綱領も載せている。今の日本会議のようなものを考えていたということ。しかし、この本が出た4年後には著者は亡くなってしまうので、結局自民党外の政治運動に関わることはないままで終わった。