性と愛の日本語講座

小谷野敦『性と愛の日本語講座』ちくま新書、2003


あっちゃんの性、愛関連の「個人辞書」。まあ、いつものとおりすごい。

最初は、「恋人をパートナーと呼ぶのは気持ち悪い」という話から始まるのだが、そこで夫や妻でない恋人をどのようにいつから呼んでいるのかというのが切り出し。

だいたい江戸時代(あっちゃんは、「徳川時代」と言うが)から、昭和くらいまでの用例を当たっているが、それだけではなく、平安時代万葉集、北米、ヨーロッパや中国の用例も、その時に応じて当たっている。

「恋人」が肉体関係を伴う、結婚していない相手を呼ぶのは、明治以後、次第にそうなっていった(その前は、「いろ」)が、元は娼妓と客の関係。それが肉体関係なしでも恋人というようになったのは、1969年の歌「白い色は恋人の色」からだろうとしている。

ニッコク日本国語大辞典は最初にあたるとして、とにかく次から次へと用例が出てきて、それをたどっていくうちに、特定の概念や行動がいつごろから始まったのかがわかる。

この方法で、「恋人」、「デート」、「セックス」、「情欲」、「愛の告白」、「処女と童貞」、「情事の終わり」、「好色」、「老嬢、シングルライフ」、「片思い、女たらし」、「しなやか」と進んでいる。年表、索引つき。

あっちゃんは井上章一を先達としたと言っているが、先達はすごいからいいとして、この作業はいつまでやってもキリがない。用例は無数にあるし、言葉や行動も動いているもの。あきれるくらいの情熱がないと続かない。あっちゃんの本はいつもおそろしい。