愛と欲望の雑談

岸政彦、雨宮まみ『愛と欲望の雑談』ミシマ社、2016


先日亡くなった雨宮まみと、社会学者の岸政彦の対談。2016年9月4日に初版が出ているので、これが雨宮まみの遺著ということになる。

対談は2回あって、第1の対談が「恋愛しないといけないの?」。納得したのは、「日本人は、昔から恋愛できない」という話。知らない他者を信頼することができない社会で、ある程度「安心」が周りから保証されていないと、何もしないし、できない。だから、昔は親戚や職場が出会いを保証してくれていたので、結婚できていたが、今はそういうものはないのでできない。恋愛も、言葉で他人を振り向かせるスキルがもともとなく、出会いの場でも踏み出せなくなっているので、できなくなっているというもの。

第2の対談は、「浮気はダメ!」。正確には、岸は、「浮気はない」と言っている。ないというのは、たとえしていたとしても、夫や妻にそのことを言うとか、認めるとかいうことはない。自分だけのことにしておかなければならないということ。他の人(夫、妻含む)の前では、浮気は存在しないことにしておく。雨宮まみは、そこまでは言っていないが、やはり相手の浮気を目の前に見せられると傷つく。

100ページもない、薄い本。読んでよかった。二人は話が合っているし、話が弾んでいる時の楽しさがよく出ている。続編が出るとよかったのに。