Fランク化する大学

音真司『Fランク化する大学』小学館新書、2016


著者は元大学教員。商社員として幹部社員になったが、そこから大学院に入り直し、博士論文執筆のために会社は辞めて学位を取得。2011年から2016年まで3つの大学で非常勤講師を務めたが、2016年で大学の教職を辞めて、その後起業、という経歴の人。ただし、専門分野は明確にされていない。

著者が勤務していたのは、中部地方の小都市の大学(A大学)、首都圏の女子の比率の高い大学(B大学)、北関東の規模の大きい大学(C大学)。どの程度のレベルかについては、はっきり書かれていないが、現首相の名前が言えないとか、「ヨーロッパ」を国の名前だと思っているとか、金髪とかいうレベル。「ヨーロッパ」は、ちょっとどうかと思うが、首相の名前がわからないとか、金髪とか、キャバクラでバイトというのは普通だと思う。

この本が述べていることは、学生のレベルに問題があるのと同等か、それ以上に、教員と大学経営者の態度に問題があるということ。教員の授業は手抜き、専任教員の採用はずさん、授業アンケートをごまかそうとする教員が普通にいるという教員側の問題が第一。定員を埋めるために適当に大学や学部の名称変更をしたり、有名人を客寄せに使ったり、スポーツに金を使ったりして、肝心の教育改善に投資していないという経営者側の問題が第二。

学生、教員、経営者のどれにも問題があるが、少なくとも学生は授業料を払っているのだから、学生ベースで問題が改善されるべきであることは明白。著者は自分のいた大学でどれくらい事情がひどいかについて述べているのだが、確かに著者は、授業にかなりの労力を投入して、準備をしたり、学生にメモを書かせたりしている。これがきちんと評価されれば、教育の質は改善されるのだが、それがうまくいかない理由がいまひとつ詰められていない。

結局、教育が改善されていないのは、学生を搾取するインセンティブが、教員と経営者の両方にあるから。著者は良い大学の見分け方、ゼミの選び方について書いているが、これをレベルの低い大学にどの程度適用できるかどうか。問題は簡単ではない。