公明党

薬師寺克行『公明党 創価学会と50年の軌跡』中公新書、2016


今年出た公明党の本だが・・・。内容は、だいたい新聞記事と関係者の著書をまとめたというもの。著者独自のリサーチはあまりない。

公明党は、まともな本がないものなので、これでもないよりはマシ。しかし、読んでいて疑問がたくさん出てくるのに、この本にはその答えが出ていない。まるごと出せというわけではないが、著者がちゃんとした研究課題を持っていないというのはどういうことなのか。

第一の問題は、「公明党は何のためにできたのか」。著者は3つの答えを示唆しているが、1つは広宣流布王仏冥合。2つは権力からの防衛。3つは選挙運動による創価学会組織の維持。1つ目はもはやなくなったが、2つ目と3つ目は、それなりの説明と事実が必要。だがそこがない。

第二の問題は、創価学会公明党との関係。この本を読むと、出版妨害事件の際には、池田大作は「学会と公明党は別の組織」とさかんに言っていたことが書いてある。しかし、それは池田大作の当時の都合でそのように言っていただけであり、現実に公明党支持者と学会会員が同じである以上、その関係がどういうものかということが問題だが、その説明がない。

第三の問題は、公明党の方針がコロコロ変わっていることをどのように説明するか。本を読むと、公明党の執行部によってかなり路線が変わっているようにみえる。みえるというのは、それが執行部の方針なのか、学会の方針なのかというかんじんなことがよくわからないから。路線転換で、公明党がどういう利益を得たのか、何をめざしていたのかということがあいまいなままで終わっている。

というわけで、事実の整理としては役に立つが、それ以上の本ではない。まあ、現段階ではこの程度しかできないということ。