ヒラリー・クリントン

春原剛『ヒラリー・クリントン─その政策・信条・人脈』新潮新書、2016


なんとかかんとか言っても結局勝つだろうと思われていて結局負けちゃったヒラリー・クリントン。今となっては何を言ってもむなしいが、この本は読まれるべきもの。ヒラリーがどういう人で、どういうルートを歩んでここまで来たかということをちゃんと説明している。

ヒラリーは、女性の社会進出がまだ簡単ではなかった時に出てきた人なので、非常に苦労してきた人。そのためには、多少無理をしても、嫌われても、何が何でも前に出なければいけなかったので、そのために嫌われていた人。ヒラリー嫌いの決定打は、ビル・クリントン時代の、政府の仕切り方。そして、ホワイトウォーター疑惑。日本では多少の疑惑はいったん忘れられればなかったことのようにされるが、ヒラリーの場合にはそうとは言えず、そこでヒラリー嫌いになった人はずっとそれが続く。

これは著者が書いたことではないが、「ヒラリー・クリントンアメリカの片山さつき」と言っていた人がいて、それはさすがにヒラリー・クリントンに失礼だろうと思ったが、あの嫌われ方は尋常ではない。でなければ、トランプが勝てるわけはない。

この本を読むと、ヒラリーは、「生来のウソつき」扱いされていると書かれていて、eメール事件はそのイメージを決定的にした。トランプが勝てたのは、トランプに対する期待があるとしても、結局ヒラリーがそのくらい嫌われていたということ。

この本が書かれた今年の6月くらいの時点で、ビル・クリントンは心臓にまだ重病を抱えていて、また大手術が必要な状態。ビル・クリントンは「死んだら、国葬にしてアーリントン墓地に葬ってくれ。自分の死は最大限利用してくれ」と、ヒラリーに言っている。これでビル・クリントンの遺言も無になったかと思うとあわれの限り。