バカざんまい

中川淳一郎『バカざんまい』新潮新書、2016


中川淳一郎のエッセイ本。「バカ」をけなすようなスタイルだが、実際は、いつもの通り、ちょっと引いた視点で物事に対して突っ込んでいるというもの。特別に何かをディスっているというわけではない。

というか、、中川淳一郎が突っ込んでいるのは、sNSやら何やらを通じて表に噴出している「世間」そのもの。昔は可視化されていなかった素人のバカ意見がガンガン表に出てくるようになり、テレビもネットも、それに逆らうようなことを言えば「炎上」する世の中。正論というものであっても、世論の前にはあまり価値はなく、何でもかんでも、餌食にされておわり。

なので、そんなに目新しいこともないのだが、ひとつ納得したのは、「ケースバイケース」というな、という話。他人に何かを質問したり、「こういう場合はどうするのか?」と仮定の話をしている時に、「ケースバイケース」「人による」というような答えは意味がないし、そういう答えをしている側がバカだと言っているようなもの。なぜなら、そのような質問は相手の考え方や立場を確認するためにされているのだから、どのような答えでも、「自分はこう思う」と言わなければならない。

質問をされたら、何であっても結論を言えということ。これをごまかすとすれば、ごまかす理由がきちんとある場合。著者が言うように、「金を取っているセミナーの講師でありながら、受講者の質問にきちんと答えない者がいる」というのは論外。

自分が何を言っても、何で叩かれるかわからない社会だけど、それならそれで、ある程度リスクを考えた上で自分の立場をしめす方法はあるわけで、それでも何も内容があることを言えないというのは、本人の怠慢。それは著者でなくても、誰かが言わなければいけないこと。