ローズ奨学生

三輪裕範『ローズ奨学生 アメリカの超エリートたち』文春新書、2001


ローズ奨学生とローズ奨学金についての本。ビル・クリントンがローズ奨学生で、この奨学金をもらっている人が超エリートだということくらいは知っていたが、詳しいことは知らなかったのでけっこう勉強になった。

ローズ奨学金は、セシル・ローズが英帝国地域の学生を英本国に留学させるために創設した奨学金。英連邦諸国、アメリカ、ドイツが対象国。イギリスには関係ないのに、ドイツが入っている理由は、ローズが英独提携をもくろんでいたから。

ローズ奨学金は、これがもらえるとオックスフォード大学に行けるのだが、これの選考過程が厳しく、成績優秀であることはもちろん、スポーツに秀で、人格円満、リーダーシップと高い倫理性があることなど、とにかく指導者になれる人間であることが求められる。こういう奨学金なので、政治家や政府高官になっている人間が続出。

女性は基本的には対象になっておらず、1976年以後にやっと受給対象になった。もっとも現在は奨学生の半分は女性。歴史が浅いので、ローズ奨学金をもらった女性の中ではまだ有名人がほとんどいない。それでもローズ奨学生がエリートという事実は変わらない。

ケネディ政権とクリントン政権は、特にローズ奨学生の活躍が目立った時期で、ディーン・ラスク、ウォルト・ロストウ、ビル・クリントンロバート・ライシュストローブ・タルボット、アイラ・マガジナー、ジョージステファノポロスらの政権中枢にいる人々がローズ奨学生だった。

もっとも、クリントンは、「エリート、特権階級」とみられることが選挙でマイナスと思っていたので、このことは隠そうとしていたという話。

ローズ奨学生がいかにすごいかというのは、この本でよくわかった。ただ、ローズ奨学生が政治志向になるのはほぼアメリカのことで、それ以外では学者、弁護士、医者、ビジネスパーソンも多い。そっちのほうも紹介してほしかった。