部落ってどこ?部落民ってだれ?

鳥取ループ、三品純『部落ってどこ?部落民ってだれ?』示現舎、2016


これは傑作。真剣に身を入れて取材している本。この本、電子書籍として出たものを印刷製本しているだけで、自費出版本。この内容を読めば、この本が商業出版のルートに絶対にのらない理由はわかる。しかし、この仕事は誰かがする必要があるもの。

著者がしていることは、行政から、「部落はどこにあり、誰が部落民なのか」を直接聞き出すこと。そんなことができるわけはないというのが普通の考えだが、「情報公開条例」というものがあるので、それを道具として使って、やれることをすべてやっている。その一部始終を書いたのがこの本。

当然、行政は情報公開条例を使っても、「不存在」と回答してくるのだが、「どのような情報を不存在と回答してくるのか」、「その理由は何か」を粘り強く調べ上げることで、隠そうとしているものが、逆光で浮かび上がってくる。かんたんに言えば、行政は部落解放同盟のような同和団体とほぼ一体として行動しているのであり、彼らの基準が認めない情報は出さないし、彼らが認めるやり方でしかこの問題を取り上げることを許さない。

行政と同和団体は、共同作業で「同和権力」とも言えるようなものを作り出しており、それは同和対策法制がなくなった後も、残り滓として、一部に残っている。それに手を触れようとすると、同和団体関係者(著者の職場に圧力をかけるという形で攻撃)や、行政(法務局が、同和に関係している情報を削除するようにプロバイダに「お願い」する)が圧力をかけてくる。

著者は訴訟で対抗しているのだが、かんたんに行ける話ではない。この本には出ていないが、著者自身が、同和団体からの訴訟の相手にされている。まったく金にはならず、果てしなく労力を要求される仕事。しかも、新聞もテレビも出版も、絶対に手は出さない。これがジャーナリズムの仕事。