「地政学」は殺傷力のある武器である

兵藤二十八『「地政学」は殺傷力のある武器である』徳間書店、2016


兵藤二十八の本が、たまたま図書館に入っていたので、ひさしぶりに読んだ。非常に快調で、楽しく読めた。

地政学」と言っていて、実際に、マハン、マッキンダー、スパイクマンと、ドイツ人地政学者(ラッツェル、ハウスホーファー、チェレーンを取り上げている。彼らの本の紹介は簡単だが、この本の優位は、本の紹介だけではなく、「いま、実際にそれを適用すれば、または過去に適用していれば、どういう結論になるのか」を事実を織り交ぜて明らかにしていること。

当然だが、これらの人々は、その時代のテクノロジーを前提にして議論をしているので、それを抜きにして、ハートランドとかリムランドと言っても、あまり意味はない。鉄道、飛行機、汽船があるのかないのかということによって、それらが距離と時間をどのように操作できるのかによって、「地政学」の意味は違うはず。

まあ、著者は、技術進歩があったからといって、簡単に地政学の基本的な結論が変わるとは思っておらず、技術進歩は地理的制約を超えられないと考えている。それも正しいと思う。

輸送路が決まれば、チョークポイントも決まり、そこを封鎖する手段は、いくらでもある。従って、どこを押さえるかはあいかわらず重要。太平洋戦争時の日本とアメリカの石油輸送についての記述は、非常に参考になった。相変わらず無茶な議論をしていると思うところもあるが、そこはそれとして、役に立つところは役に立つ。