安全保障入門

石動竜仁『安全保障入門』星海社新書、2016


今月出たばかりの本。著者はブロガー。プロではない。しかも新書で「安全保障入門」というデカいタイトル。大丈夫なのか?と思ったが、これは非常な良書。

伝統的安全保障理論、軍事、平和研究、最近の問題、日本の安全保障にそれぞれ一章が割かれていて、説明がなされている。体系的な本ではないが、それぞれの分野(どれも安全保障の理解には欠かせないもの)にきちんと触れていて、偏りすぎていないところがよい。単に戦争の問題ではなく、安全保障を俯瞰する視点にたっている。

もちろん、すべての立場から中立的ということはありえないので、著者が基本的には伝統的な安全保障を最も重視していることは明白。それ以外の部分の記述もそういう立場になっている。しかし、やはりバランスというものが大事で、著者はそのバランスの取り方がきちんとできている人。

また、文献によくあたっている。本の性格上、外国語文献には言及されていないが、日本語の文献は紀要論文であってもちゃんと触れられていて、著者が長い時間をかけてきちんとした知識を蓄積してきたことがわかる。

人名や肩書の誤字とか、校正が充分でないのは、これから直せばいいところ。このような本は新しいことも重要なので、しばらくはこの分野に暗い人が最初に読むべき本のひとつになるはず。こういう良書がなるべく広く読まれてほしい。