自由と民主主義をもうやめる

佐伯啓思『自由と民主主義をもうやめる』幻冬舎新書、2013


タイトルはこのようになっているが、内容は「保守主義」の解説。

著者の見解では、自由も民主主義もそれ自体が正しいというものではなく、基本的には「容器」なので、その中に歴史的に積み重ねられた考え方が入っていないとまともに機能しないと言っている。

「親米」や「反左翼」は、保守にはならず、もともと日本にはアメリカ的な意味での「保守」は合わないとする。それでは日本の伝統に従った保守とは何で、それは「自由」「民主主義」と整合性がとれるのかということになると、とたんに著者の筆が鈍くなる。

「無」(西田幾多郎の)とか、郷土愛に基づくナショナリズムを持ち出しているが、それが何かポジティブな思想になっているのかというと、さすがに著者もそういうことは言えない。

それだったら、「あいまいな日本」と「反グローバリズム」が日本の保守主義の内容になってしまうのではないかと思うが、著者にとっては、日本の伝統を保守することと、日本の政治体制の保守は整合的につながっていることになるらしい。この本からはそうは読めないと思うが。