核に魅入られた国家

会川晴之『核に魅入られた国家 知られざる拡散の実態』毎日新聞出版、2016


著者は毎日新聞編集委員。この本は、パキスタン、イラン、日本を取材してまとめた本。

パキスタン編が一番よく書けていて、パキスタン核武装に至った経緯が当事者への取材で明らかにされている。パキスタンの核開発はカーン博士が全部リーダーシップをとって行ったわけではなく、ライバルとの功名争いなど、いろいろとドラマがあったという話。先進国の技術輸出に対する警戒も十分なレベルではなかった。核技術の横流しも、イラン、イラクリビア北朝鮮などと、計画、実行していた。

イランはこれに比べると取材が薄い。パキスタンほど話が公になっていないので、話せる人が少ないのだろう。

日本については、戦時中の核開発から、比較的最近の事態まで、幅広く調べている。わかることは、日本の核武装については特に核科学者、技術者に支持が少なく(技術的潜在力を維持するというレベルの議論でも、「出すべきではない」ということになる)、むずかしいということ。別のことを考えていたとしても、新聞記者にべらべらとしゃべったりはしないだろうが、アメリカその他から、核兵器開発については相当強い疑念を抱かれていることが大きな要因。結局技術的潜在力を維持するという以上のことはできていない。

ていねいに取材していて、勉強になるところが多かった。