残念な政治家を選ばない技術~「選挙リテラシー入門」~

松田馨『残念な政治家を選ばない技術~「選挙リテラシー入門」~』光文社新書、2016


これは好著。著者は1980年生まれ、「選挙プランナー」。今はだんだん一般的になってきた、「契約で他人の選挙運動に対してアドバイスする仕事」の人。この仕事を始めて10年たったと書いているので、この仕事も定着しつつあるということ。

基本的には、「有権者の立場」と「候補者の立場」の両方から選挙を見ていく本。市町村長、市町村議から国会議員までの各級の政治家の役割と選挙の意味、それぞれの選挙活動、政治活動がどのように行われているのかというレベルから説明している。

選挙を行う側が絶対に知っていなければならない公職選挙法についても一章を割いている。あまり詳しいものではないが、公職選挙法の解釈にはグレーな部分があり、それを選管に確認しながらでないと選挙活動は進められないことははっきり書いている。

選挙プランナー」という著者の仕事が何をしているのかという部分が一番の読みどころ。候補者との協議、有権者調査、選挙戦略の練り込みといったところで、広告代理店の仕事と基本的に同じもの。昔からあった、「選挙屋」「選挙ゴロ」の仕事が、外から見えるように可視化されたということ。

最後の章はネット選挙の可能性を、2014年の都知事選での家入一真の選挙戦(これは著者が実際に手伝った)を例に説明しているが、泡沫候補でも500万票のうち、89000票とって5位につけているから、それなりの可能性は示せたということ。この章では、家入氏は、「選挙は入り口で、これからも政治に取り組む」と言っているのだが、その後どうなっちゃったのか。インターネットだろうが、なんだろうが、継続的に活動しないとダメということは著者がこの本でも強調していることだけど。