日本会議の正体

青木理日本会議の正体』平凡社新書、2016


最近雨後の筍のように出ている「日本会議本」のひとつ。このタイミングで同じネタの本が次々と出ている理由はよくわからない。取材には手間がかかり(関係者はあまりインタビューに答えない)、文書資料は少ない。

現在、レイプ未遂事件が公になって雲隠れしている菅野完の『日本会議の研究』が、資料をていねいに拾っていたのに対して、こちらはインタビューが中心。菅野本に比べると、謎解きのようなおもしろさはあまりないが、できる限り関係者に話を聞いていることは貴重。

しかし日本会議の事務局関係者はインタビューには応じない(このエピソードが巻末に書かれている)ので、聞いているのは、稲田朋美自民党の都議、神奈川県の神社の宮司といった人々。著者自身も認めているが、日本会議は、それほどおカネをもっているわけではなく、集票組織としては規模が小さすぎる。この団体が力を持っているというわけではなく、言論界、財界と保守政治家の結節点として、まめに動いていることが、焦点をあてられている理由のようにみえる。これも努力がないとできないことなので、軽く見ていいことではないが。

菅野本との最大の違いは、青木本では、神社神道の役割が重視されていること。菅野本は、神社はそれほど影響力を持っていないとして、重視していない。菅野も青木も、神社神道の活動について網羅的な調査をしたわけではなく、自分が調べたり話を聞いた範囲での評価を述べているだけなのだが、青木は以前の生長の家と、神社以外の宗教についてはあまり調べていないので、この本だけでは説得力が薄いと思う。

便乗本も含めて、そんなに数が出ているわけではないので、他の関連本も読むつもり。この本の参考文献リストと年表は便利。