ウェブでメシを食うということ

中川淳一郎『ウェブでメシを食うということ』毎日新聞出版、2016


中川淳一郎の新刊。内容は、「インターネットの自分史」みたいなもの。著者は1994年にインターネットに接するようになったと書いているので、だいたい日本にインターネットが導入された初めの頃からネットに関わっていることになる。個人史ではあるが、インターネットの歴史としておもしろくまとまっている。

著者は会社(博報堂)を辞めて、2001年から編集、特にネットニュースの編集に関わるようになっているので、インターネットの普及がまだだった頃に、どうやってネットがお金になっていたのかがよくわかる。それがこの本の一番の価値。著者は「ネット小作農」と自己卑下しているが、実際、ネットニュースの編集は、非常に地道な仕事。

日々の試行錯誤の中から、「何が炎上し、何が受けるのか」を少しずつ掴んで、受けるネタを出していくのがこの仕事。これは簡単には機械で代替はできないわ。

途中で、著者の恋人が自殺した話が出てきて、非常にリアル。基本的に著者の仕事歴は、ただネットを見ている作業ではなく、それを通じてリアルに人とつながりを持って、そこから新しい仕事や人間関係を作っていくというもの。著者は口の悪い人ではあるが、基本的に人付き合いのいい性格。どの分野でもそうだが、これがないとフリーで長く仕事を続けていくことはむずかしいのだろう。